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ポストオストメイトの生活、これからできること──日本オストミー協会北海道支部 須佐理恵子×エムアクト 神戸翼【後半】

病気とは、突然なってしまうものです。それでも付き合っていくことを余儀なくされ、後戻りすることはできません。

前半では日本オストミー協会(以下「JOA」と表記)須佐理恵子さんに、がんの発覚からストーマを受容できるまでをお伺いしました。
後半では、ストーマ造設後の食事や仕事、ストーマ装具、課外活動などに関する具体的なお話をお伺いしました。

インタビューの前半はこちら

目次

どういう生活をしている?

食事

続いて生活のお話しを聞いていきたいと思います。はじめは食事です。手術前とまったく違うと思いますが、どうですか?

「ウロは食事制限なくていいよね」と思われるかもしれませんが、そんなことはないんですよ。
私は、40センチの腸と子宮を取っているせいか、子宮のあった部分に腸が入り込んで、癒着と狭窄でぐちゃぐちゃになっているんです。なので、痛みとか消化不良があり、消化器内科に入院することがあるんです。

基本的には低残渣食で、整腸剤を3種類ほど飲んで体調をコントロールしています。癒着の部分を切除すれば解決するわけでもないんです。切除した場所に癒着している腸が、その部分に降りてくることを繰り返すからです。

外科的手術となると、小腸含め大腸すべてを取ることになるんです。そういうことをしたくないので、薬を飲んで検査を受けています。4、5日は便秘で2、3日は下痢というのを繰り返していて、お腹の痛みは毎日。なので、常日頃から気を遣っています。

ただ、自分がゆるいのかもしれないんですけど、仕事終わりに低残渣食をつくるというのも限界があって。極力、消化の悪いモノ、きのことか海藻など食物繊維の多いモノは食べない。そして、健康のためにいろんなものをバランスよくゆっくりかんで食べています。調子の悪いときは低残渣食というか、低残渣食もどきですかね。うまく付き合っていかないとダブル、トリプルストーマになっちゃうのが目に見えているので。

さらに手術のせいか、果物アレルギーになりました。マンゴーアイスを食べたら、アナフィラキシーショックを起こして救急搬送もされました。果物のみならず、食品添加物として入っている果汁や粉末もすべて反応しちゃうので大変なんです、これでも。

ありがとうございます。
ウロでもやはり人によって違いますよね。それこそ、何に気を付けるかは難しいとは思います。ひとつひとつ試すというのはおかしいですが、経験が必要かもしれないですね。

仕事

次は仕事に関してです。当時も、オストメイトになった今もお仕事をされてるかと思うので、その辺りはいかがですか?

発覚のときまでは、スーパーで働いていました。勤務時間は14時から23時まで、月に6日休みだったんです。21時から23時は責任者を務めていました。
ただ、オストメイトになってからは、責任者なので具合が悪いとか言えないんです。さらに人もいないですから、自分でやらないといけない。スーパーですから持ち運びでストーマに負担がかかっていて、ときには出血ばかりしている状態が半年ぐらい続いて「もう無理」と思って辞めました。

ちょうどそのとき、JOAを支援するストーマ関連会社の方が、契約社員の打診をしてくれました。そして入社したんですが、ストーマ関連とは別の部署に配属されたんですよね。

障害者への理解と偏見など考え方の違いが混在していて、いじめがありました。一部の方が暴言を吐くんです。そういうことが話題として出てくることに傷ついていて、あるとき出勤するとき「死にたいな」と思って泣きたくなりました。だんだん自分がこわれていくんです。友達が心療内科に連れて行ってくれまして「強度のうつ」の診断が出たんです。

うつの治療をしているときは、人に会いたくなくて。唯一JOAの心の知れた人たちだけには会えるんですが、それ以外には会いたくない日々が何カ月か続きました。
仕事に行くのが怖いんです。友達もたくさんいたんですが、暴言を吐く人たちが怖いんです。会社にも行っても認めないんです。喧嘩するのも疲れてしまって、それで3年ほど働いた会社を辞めて。しばらく家で休養することになりました。

落ち着いたところで、官公庁の障害者枠で事務をはじめました。4年目になります。オストメイトに関する知識はないですが、障害者にすごく配慮をしてくれます。暑さで腎臓に菌が入り入院したという話をしたら、わたし個人のために扇風機を購入してくれるなど配慮していただきまして。幸せな環境で働いています。
 
ただ唯一困っているのが、私の上司でして。1年ごとに変わるんです。なので、毎回同じことを説明しなくてはいけなくて。理解はしてくれるんですが、いつもは元気に仕事をしているので「障害があることを忘れちゃうんだよね、ごめんね」と。それも嬉しいんですが、ときには困ったなという場面があるという毎日を送っています。

いま働いている官公庁の職場はどうやって見つけたんですか?

インターネットです。障害者雇用で探していました。たまたま求人を募集していたので電話してみたら、とんとん拍子に決まりました。

そうなんですね、それは運がよかったということですかね。
家の近くだったんですか?

また、官公庁ということは公務員になるんですか?

家から15分ほどです。
そうですね、国家公務員というんですかね。

やはり公務員だからこそ配慮されるんですかね。前の職場である民間企業と比べてどうですか。

会社というよりも人でしょうね。人によると思います。

外出・課外活動

JOAの話もありましたが、課外活動といいますか、その辺のお話をお聞きしたいと思います。

5年生きられないと言われて、9年生きちゃったわけですから。でも先生は「1年1年なにが起こるからわからないから注意して生きなさい」と言われ、安心していられないと思いました。1日1日大切に充実して生きないと後で後悔するなと思いまして、行きたいところは行く、元気でいれれるうちは楽しくどこでも行く。そんな生き方で、前を向いて生きたいなと。あちこち行くようになりました。

JOAというのは私の命を救ってくれた場所、いまの居場所ですね。会員さんと過ごす時間が本当に楽しくて。わたしは根が暗いものですから、社会で傷ついたとき、自分を奮い立たせるために何かをしていないと本当にへこんじゃうんです。
そのためには、なにか会員さんと一緒に楽しめることないかなと常に考えるようにしています。

実行したとき、本当に楽しんでくださるんですよ、みなさん。「楽しかったよー、また企画してね」と言われると「またがんばっちゃおうかな」と思うのが生きがいとなっていて。それがやっぱり私の生きている証かなと。JOAにいてよかったなと思います。

インターネットで調べる情報よりも、当事者と直接会って話をするのは、本当に心に対して良い薬になります。

たまに一緒にご飯を食べながら、お茶を飲みながら、お酒を飲みながら排泄の話ができるんですね。家族や同僚、友達は、ご飯を食べながら便の話ってできないじゃないですか。それが簡単にできるんですよ、同じ目線で話を返してくれるんです。

悩んでることもわかるし、逆に悩みを聞かせてもらったり、お互い知らないことを調べてみたり。それは同じ当事者だからこそできる最大の強みだと私は思っています。だからこそ、生きていられるんだなと思います。JOAには本当に感謝です。

Facebookは自己満足からはじめました。
困ったことは、ほぼ夜起きるんです。病院への電話もつながらない、どうにもならないというときに、当事者で同じ悩みを打ち明けられる人を探したとき、SNSがあると気づきました。

はじめは「ストーマ 扱い 困った」とつぶやいたんですよ。それで何人かの人が返してくれました。そこで、この人たちとグループをつくろうと思ったんです。最初は10人ほどのグループだったんです。当初は、日常やストーマの話が盛り上がっていました。そして9年後に240名ほどの、ちょっと大きなグループに成長してくれたんです。

また、公開グループから非公開グループに変えたら、さまざまな方が情報をくださったり、悩みを打ち明けて下さったりと活動的になっていきました。それに助けられて、友達がいっぱいできて、よかったなと思っているんです。
たまに批判はあるんですが、それにもは負けず、面の皮厚くとやってますね(苦笑)。

私もそのグループに入っているのですが、本当に頻繁にやりとりされていますよね。そういうこともあるんだと、色々な学びがあります。

はい。
あ、一回メンバーでズームのようなオンラインでもやりたいんですけど、神戸さん一回やってくれませんか?

もちろんいいですよ!言っていただければやりますので!

ぜひお願いします!

装具などのお話

生活の話は以上にしまして、装具やストーマ用品の話をお聞きしたいと思います。

ウロストミーは24時間尿が出続けるので、皮膚が乾かないんです。皮膚が乾かないと面板が貼れないので、出続ける尿の量をコントロールすることが必要です。

私は交換する時間を決めます。週2回、仕事終わりの18時に交換しようと計算したとき、3時間前からは飲食をストップします。看護師さんから教わったのは、いま食べたものが尿として排出されるのは2、3時間後ということです。なので、15時に飲食をストップすれば18時には出ない計算です。
全て止まることはないですが、尿の量や勢いをコントロールできるんです。尿が出て貼れない状況を回避でき、装具の交換がスムーズになります。

最近まで装具は「アシュラ」を使っていたんですが、体形が変化したので「センシュラミオ」に変えたんです。
みなさん、長年使っていた装具は変えるのが怖いとおっしゃっていたんですが「そんなことないよ」と思ってたんです。いざ自分のことになると本当にできないもので。本当に反省しています。やっと自分で装具を変えて、快適に過ごしています。

面板以外でおすすめは、コラージュフルフル リキッドソープです。WOCナースさんに薦められて3年経ちましたが、これまで悩んでいた皮膚のかゆみが本当になくなりました。長年貼っていた面板の黒ずみがだんだん薄くなってきました。
ただ、ちょっと高めで給付金も使えないので敬遠しがちなんですが、ストーマの周囲にだけ使うと結構もつので損ではないと思います。

いままでは弱酸性のものしか使えませんでしたが、女子なのでビオレしか使えないのはさみしいんですよ。新商品が出ると使ってみたいんですよね。
使っちゃいけないと思っていたんですが、これを使うようになってストーマ周り以外は好きなものを使えるようになったんです。すごくお風呂が楽しくなって女子力があがって、本当にこれが最高だなと思っています。

ありがとうございます。実体験に基づいた貴重なお話でした。
他にメーカーさんへメッセージがあればお願いします。

そうですね。あるメーカーさんと話したとき「ツーピースの装具を水で洗ってはいけない」とおっしゃっていました。水で洗うことによって接着面が弱まるからだそうです。ただ、そういう情報は聞いてみてはじめて知るお話なので、知らない人が多いですよね。
なので、装具を送って下さる箱などに注意書きをしてくださると、とってもありがたいなと思います。

メーカーさん自身もいろいろ情報を持っていると思うので、そういうことも発信できるといいなと私も思いました。

オストメイトになって得られたもの

得られたもの

いよいよ最後のお話に入っていきます。
オストメイトになって得られたものはなんでしょうか?

全国各地のオストメイトさんに会えたことが宝物だと思います。つらいことも苦しこともひっくるめて、お話しできる友達ができたことが、本当にありがたいです。自分が病気になって、他の人の痛みや苦しみが理解できるようになりました。ちょっとでも成長したのかなと。本当にちょっとだけですよ。そう思えるのが得られたものかなと思います。

貴重なお話をありがとうございます!

では、今後やりたいことや夢はありますか?

今後やりたいこと・夢

オストメイトになる前は、スキーや水泳、温泉巡りが好きでよく行きました。いま全然できていなくて、スキーも温泉もやりたい気持ちが7割、怖い気持ちが3割で、ちょっとやりたいな、怖いなという試行錯誤の日々で前に進んでいません。
 
それと全国各地のオストメイトさんに会ってみたいです。
あと、JOA支部の中でいろいろ企画をしていて、先輩オストメイト対若いオストメイトチームでボウリング大会をと。オストメイトでもボウリングできるんだぞと一般に見せつけたいなと思ってて。そんなことを企んでいます。

北海道なので、スキーの誘惑は大きいですね。

オストメイトの仲間へのメッセージ

それでは最後にオストメイトの仲間に向けてメッセージをいただきたいと思います。

ぜひ仲間をつくってほしい。お医者さんには病気を治してもらい、WOCナースさんにはストーマに関する知識を教わり、ストーマのことを診てもらいます。

だけど、当事者にしかない知恵と工夫がいっぱいあるんです。なので、同じオストメイトというカテゴリーの仲間なので、共感することはたくさんあると思います。

インターネットで知りたいことがすぐ出てくるのはわかります。わざわざ人とあって悩みを打ち明けるのは、わずらわしいと思う人がいるのもわかります。それで済むのならそれでいいんですが、身近に同じ境遇の友達がいると本当に心が安らぎます。
お住まいの地域にJOAの催しがあるはずです。相談会だったり交流会だったり。入会するかは別の話で、何度か顔を出したら友達もできるかもしれないので。オストメイト同士、仲良く手をつないで生きていければ、本当にうれしいなと思います。

私たちオストメイトは全国に約20万人いるんですね。医療者の方とみんな手をつないで、なかなか理解されない障害の認知度を上げていきたいと思います。
排泄に関することだから知られたくない、恥ずかしいと思う方もおりますが、社会復帰をして仕事をしているオストメイトを、私は誇らしいことだと思います。無茶をせずに体をいたわりながら、がんばりすぎずにオストメイト同士・医療者同士仲良く手を取り合って生きていければ嬉しいなと思います。

※本記事はYouTubeチャンネルの動画を元に、執筆者が加筆・修正・編集を行なっています。
公開インタビュー撮影会は月に1回を予定しております。お話しても良いという方はご連絡いただけると幸いです(自薦・他薦大歓迎です)。
メールアドレス:info@m-akt-jp

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