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柔道が再起するきっかけに。性機能障害と恋愛観──柿本聡×エムアクト 神戸翼【後半】

がんの告知と余命宣告、手術前には性機能障害になることを報告されました。目覚めて、ストーマの実感により現実を直視することになります。受け入れられたのは母が渡してくれたメッセージカードだったそうです。もう一度柔道に携わりたい、その想いが生きる原動力になりました。 

前半ではがんの発覚からストーマを造設するまでの経緯を伺いました。

後半では、オストメイトになったあと柔道をするために試行錯誤していったこと、性機能障害を持ってからの恋愛経験、変化した介護の視点についての具体的なお話をいただきました。

インタビューの前半はこちら

目次

生活について

運動について

運動についてお聞きしてもよろしいですか?

はい。運動は柔道に多くの時間取り組んできました。12歳からはじめました。柔道の監督をして20年になります。がん発覚当時は、がんになっても運動している方もいらっしゃるのでそこまで考えていませんでした。
 
しかしオストメイトになるときに、先生からもWOCナースさんからも柔道はやってはいけないと言われました。ガイドラインにも柔道やラグビー、相撲などのコンタクトスポーツはやってはいけないと書いてあります。
すごい悩みました。どうにかやりたいという気持ちはありましたが、がんのステージ4なのだから諦めようと思いました。道場で教え子や関係者を全員集め、がんであることをお伝えしました。

時間が経ち、手術後の「殺してくれ」の話になるんです。息子としては最悪の言葉だったと思います。
そのときおふくろがでっかい袋を置いたんです。その中には千羽鶴やメッセージカードが入ってました。道場の子どもたちや保護者、OBOGが、手術日に合わせて千羽鶴やメッセージカードを作ってくれたんです。それを見たときにひきつけをするぐらい大泣きをしてしまいました。

神戸さんはご存じだと思いますが、手術後は容体が急変しやすいんですね。いろいろ管が入っている状態で大泣きしたものですから、心電図がおかしくなったりしました。
そのせいでコードブルー(患者の容体急変などの緊急事態が発生したときに用いられる救急コール)がかかってしまったんです。ナースさんや先生たちが飛び込んできたんですが、ひきつけを起こしているだけなので、事情を説明して一緒に泣いてもらいその場は収まりました。

このことから、なにがなんでもこの子たちと柔道を一緒にやりたいという想いを抱きました。苦しくてもなにがあっても周りがなにを言っても、もう一回柔道をやる道を探そうと決意しました。やけどをしたあとに、柔道をしようとしていたときにも同じような経験があるので、柔道をできる道を探しはじめました。

柔道のことを考えなければ、ストーマ装具の強度の問題は考える必要はありません。ですが、運動中は装具が動いてしまうので、ある程度強度があることが必須でした。最初はナースさんや先生からもなかなか認めていただけませんでした。「頼むから柔道をやるってことは考えないでくれ」といった感じでした。

どうしても試合に出たい、子どもたちを直接教えたいということで、半年後には道場に抗がん剤の点滴を首から下げて道場に行って、練習を見ていました。教えはしませんが、子どもたちを見ていました。

装具やアンダーウエアを試行錯誤して、1年後に柔道着を来て少し動き出しました。2年後には子どもたちと一緒に試合に出ることができました。
本来はアンダーウエアを着たり、装具を付けたりしてはいけないんですが、周囲の柔道の先生の許可がいただけました。長野県の公式大会では安全に配慮すれば、アンダーウエアを着てプラスチックの装具をつけて出場してもいいことになったんです。

なんとか柔道ができるようになり、現役時代には出せなかった長野県の実業団大会の4段の部で優勝という結果を手にすることができました。

その後、県で優勝することができたので、一度も出たことがない全国大会に出たいという目標を立てました。柔道をすることは、傍ヘルニアになりやすいというリスクも承知のうえで続けています。

ありがとうございます。
担当の先生やWOCナースさんは、最後まで柔道をすることに反対していたんですか?それとも柿本さんの熱意に負けてしまい許可を出したんでしょうか?

そうですね。柔道をすると、傍ヘルニアを引き起こす可能性があります。また接触が多い競技のため、装具のプラスチック部分が当たってしまうリスクもあり、医師は反対していました。
その対策として、危険性をひとつずつ潰していったんです。その結果、熱意に負けたというのが先生たちの本音かもしれないですね。

そして大きい要因として、ストーマ―メーカーさんがWOCナースさん以上に親身に装具のことを考えたり情報提供をしてくれました。

なるほどです。
アンダーウエアに関しては、ストーマや装具を保護する感じだったり特殊なものだったりするんですか?

試行錯誤のうえ、いまはそのようになっています。当初はツーピースの装具の上からバスタオルを巻いて、さらにその上をさらしで巻いていました。装具をしっかり抑えたうえでアンダーウエアを着ていました。はじめのころは、寝技の最中などに装具が外れたり失敗を多くしました。
 
情報を仕入れていくうちに、加圧シャツといすごい締め付けるシャツと、コルセットみたいにお腹を引き締めるサポーターを見つけました。
最終的には、装具にタオルを巻いてサポーターを巻きます。そして加圧シャツを着て、その上にアンダーウエアを着ています。もう装具がはがれることはありません。現在では状況に合わせて4種類の装具を使い分けて生活しています。

ということは、柔道と日常で装具を使い分けているんですかね?

柔道と日常で使い分けるというよりは状況で、という感じです。稽古と日常ではツーピースを使っています。しかし公式戦のときはワンピースを使っています。剥がれや引っかかるリスクが少ないからです。
日常生活でもシャツなどで引っかかったりする場面では、ツーピースの袋をショートサイズにしています。

仕事

次はお仕事について教えていただけますか。

メインの仕事は老人介護の仕事をしていました。しかし再発や転移を繰り返していたときは講演活動やその他の仕事をしていました。いまも講演活動をしています。

オストメイトになった後、老人介護の仕事観が変わりました。ナースさんの指示のもと装具を剥がすのですが、「シールのようにガリガリ剥がせばいいから」と剥離剤やボディソープを使わずやっていました。当時はナースの指示もあり正しいと思ってやっていました。自分が実際になってみてやってみるとすごい痛いわけですよね。

自分がオストメイトになり、そこでオストメイトの方に間違ったケアをしていることに気づきました。いままでオストメイトの方を対応していたこともあり、剥離剤を使うことを知ったときすごく申し訳なく思いました。

私は養成校出身ということもあり、間違ったケアのことを先生に話したんです。そのとき「だったら君が正しいケアの仕方をしっかり伝えてくれないか」言われたことが最初のきっかけでした。そこからオストメイトの授業を介護の養成校で10年ほどやらせていただいています。
また、オストメイトへの正しい理解だったり、障害者理解だったり、やけどだったりと授業をさせていただきました。
4月からは老人介護の仕事に戻り、生活をさせてもらってます。

ありがとうございます。
ストーマをはがすとき、自分がはがすのと第三者がはがすのは全然違うんだろうなと感じました。介護者にもそうですが、看護師の中にもストーマの扱いがわからない方もいらっしゃいます。オストメイトの認知度を上げる重要な活動ですね。

ちなみに介護職を養成する学校でお話をするとおっしゃっていましたが、どのくらい数行われているんでしょうか?

そうですね。県内で2か所やらせていただいてます。業者の方に協力していただいて、実際に装具をはっていただき、便やガスの代用となるものもいれ、身体の状態も変化させて実地しています。
この5年ほどでは、長野県内のWOCナースさんたちに協力してもらい、介護のストーマケア終了認定証も発行できるようになりました。まずは知ってもらうということで、これを継続してやっています。
 
また長野県では障害者理解であいサポート研修というものがあり、100回ほど研修をさせていただきました。そこでもストーマ装具を取り着けることをやってもらっています。

ありがとうございます。
私も患者団体でそのような活動をお聞きしますが、全体的に数は足りていないと思います。ぜひ広めてほしいと思います。

家族・恋愛・結婚

では、先ほどのお話にもありました性、また家族や恋愛・結婚に関連することを掘り下げていきたいと思います。

はい。まず根底にある考えをお話しします。末期がんを告げられ余命宣告をされたときに思ったことは、「よく27年間おれの身体持ってくれたな」と思いました。私はやけどが原因で小中高いじめられてきました。小学生で自殺未遂もしています。そういう経験もあって常に死にたがり願望というものがいまでもあるんです。人と一緒にいるときは普通なんですが、一人のときはときどきしんどい状態にもなります。

家族はいまの状態を受け入れてくれています。末期がんになり、その後がんが再発転移を繰り返すたびに家族会議をしてきました。延命治療はしないことや、ターミナルはどうするか、という話をしてきました。

恋愛に関しては自分の状態を考えてしまいます。
やけどで嫌な思いをしているんですよね。そこで性機能障害を抱えてしまったんです。がんになってからも何人かの女性とお付き合いさせていただきました。それが性交渉をできないということで浮気をされたり、苦労をしたりしています。

自分が死んだあとにひとり残されてしまう、と思うと結婚に踏み切れないんです。恋愛はしたいんですよ。ですが、色々抱えていることを考えたとき、私から好きですと伝えることは、もう言えないんですね。やけどの見てくれだったり、がんだったり、性機能障害を抱えていますから。そういう話がやっと去年からできるようになったという感じですかね。
本当は悩んでいる方は多くいると思います。そういう話を吐き出せる場所があるといいと思います。

かなりナイーブなお話ですね。
私も患者会に行くと、たまにテーマとして出るんですが、ほとんど触れらないため情報もないんですね。
もちろん個別に聞きたい方もいると思うんですが、なかなかハードルが高くて聞けないのだと思います。共有できる仲間を見つけて話をしていくかがひとつの課題であると思いました。

オストメイトになったあと、実際に結婚する方もいます。そこにもさまざまなハードルがあると思っています。
柿本さんは自分から言わないとおっしゃっていましたが、女性からお話があった場合は、どのように行動なさるのですか?

基本的に告白されたときは性機能障害や体の状況を説明し、それでも付き合っていけるかを念押しで聞きます。それでもいい方のみお付き合いさせていただきました。なので、受け入れていただける方には「よろしくお願いします!」という感じになりますね。
つまり、私に決定権はないと思っているんですね。
こういう状況でこのような話をしたら、声掛かったら良いなという想いはありますが(笑)。

ありがとうございます。
もしかしたらこれを見られて個別に連絡をしたい方もいるかもしれません(笑)。

ぜひお願いします!

日常の工夫と普段使っているもの

装具に関してなにか言い残したことはありますか?

ストーマメーカーの方に困っていることが出たら相談するようにしています。また、メーカーのメディアはチェックして、新商品でピンとくるものを試しています。

メーカーさんへのメッセージはありますか?

メーカーさんへ具体的にこういうことをしているなどはありますか?

そうですね。当時、運動をする視点に注目したストーマ装具はなかったんです。柔らかかったり、伸び縮みしたりなどの性能に特徴はありませんでした。
一人ひとりの要望に応えるのは難しいと思いますが、意見を吸い上げると良くなると思いました。逆に私たちオストメイトはもっと注文を付けてもいいと思います。

オストメイトになって得られたもの

ありがとうございます。
オストメイトになって排泄障害などで悩まれることはあると思いますが、オストメイトになって得られたものもあると思います。
こちらいかがでしょうか?

はい。お話をいただいて一番悩んだテーマです。
ひとことで言いますと「寄り添う」ということです。がんになって、オストメイトになってなければ深く考えなかったと思います。介護をしていても、柔道で子どもたちを教えていても考えるようになりました。

また、いままでとは違うジャンルの人たちと知り合えるようになり、人の輪が広がりました。亡くなってしまいましたが、友人となった運命的な出会いもありました。
その友人がいろいろな活動を頑張っていた姿が、このような活動をさせていただく原動力になりました。彼はもっとオストメイトのために活動したかったんだと思うんですよ。私ができることを引き続きやっていこうと思います。
得られたものは、かけがえのない友人がいたし、いろいろな人との出会いがあったことだと思います。

今後やりたいこと・夢

ありがとうございます。
最後の質問で、今後やりたいことや夢はありますでしょうか?

実は夢が去年叶ったんですよね。それは全国大会に出場することでした。
オストメイトになって、柔道の全国大会に出たいと言い続けて8年ほど経ちます。今年の11月に大会があったんですね。
本当はプラスチックが付いている装具を付けてアンダーウエアを着て出場することはNGという通説でした。それがいろいろな人が協力してくださって交渉して、パラリンピックの直後ということもありルールが変わったんです。そして装具を付けてアンダーウエアを着て、念願だった柔道の全国大会に出場することができました。

いままで辛い思いもしてきました。そういう経験をする方が減るように、今後も講演活動を命の伝道師として他の人が伝えられないことを伝えていくことが、新たにやっていこうと思っていることであります。

ありがとうございます。やはり柔道の存在がすごく大きいんですね。
発覚の時点で余命は数か月だったわけですが、柔道自体や教え子などと関係しながら、いまに至っているんですね。それがいまの柿本さんにつながっている強く感じました。

オストメイトの仲間へのメッセージ

では、オストメイトの仲間へのメッセージをひとこといただいて終わりにしたいと思います。

オストメイトは外見で理解されづらいので、辛い思いをしている方もいると思います。ただ時代も変わってくるし、装具も良くなってきています。そういうことを伝えられる場をつくっていきたいと思います。

辛くて家族や親しい人になかなか言えないことを、WOCナースさんやメーカーさんに話してください。とくに私が感じることは、ストーマ外来に行っていまの装具が自分に合っているのか再確認をしていただければと思います。現在は良い装具も多く出ているので、WOCナースさんやメーカーさんにつながってみてください。

公開インタビュー撮影会は月に1回を予定しております。お話しても良いという方はご連絡いただけると幸いです(自薦・他薦大歓迎です)。
メールアドレス:info@m-akt-jp

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この記事を書いた人

ライター//元広告の営業職/NPOの発足から携わって8年目。みなさまの意見が日々の糧になります。

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