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オストメイトの生活実態調査報告書(第二編)

 日本オストミー協会(以下、「JOA」と表記)が定期的に実施してきた、オストメイトの生活実態やニーズを把握し、その生活向上を図る活動の資料とするための生活実態調査報告書の第二編として前回の続きをまとめました。

目次

ストーマ装具交換

 ストーマ装具を「自分で交換している(オストメイト)」の割合は80.5%で、「自分以外が交換」は19.4%。「自分で交換」の平均年齢は68.6歳に対して、「自分以外が交換」や「サポート併用」の平均年齢は76.0歳と75.0歳で、7歳~8歳の差があり、やはり高齢化の要素がセルフケアに影響するようです。

 ストーマ種別ごとに、「自分で交換」と「自分以外が交換」の比率と、その平均年齢を分析すると、「自分以外が交換」の比率が相対的に高いのは、ウロストミーとWストーマ、次いでコロストミーとなっています。また、たとえ同じ種別間でも、すべてのストーマ種別において、「自分以外が交換」している人の平均年齢は、「自分で交換」している人のそれを上回っており、自分でできない層が、総じて平均年齢が高いことが分かります。

 セルフケアできていない人に対する「誰にやってもらっているのか」の問いについて、「家族や親族」が65.8%、訪問看護士/介護士が22.2%、介護施設の看護師/介護士が9.9%、その他が2.1%となっています。セルフケアできなくなった時の対応は「決めていない」が77.2%と、その時まで、できる限り自ら行うという姿勢の表れかと推測され、逆に決めていると回答した中では「家族と相談で決めた」が13.8%、「自分で決めている」が6.8%に留まっています。

 ↓ 「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」はこちらから

ストーマ外来受診・オストメイト用トイレ

 「ストーマ外来受診の有無」については、術後経過「0-3年未満」と、「3-5年未満」までは定期検診している方が約5割で、それ以降術後経過年数の経過とともに減っています。今回の設問では単純に無受診かどうかを回答してもらうのではなく、「受診必要なし」と「受診できていない」を選択肢に入れたことで、術後年数の経過とともに、「受診必要なし」という理由で無受診となるオストメイトが増加していることが確認できます。一方で、「受診できていない」と回答される方が、術後経過年数が長くなるとともに数値も上がっており、受診の必要性を感じつつ、受診できていないのか懸念されます。

 オストメイト用トイレの実際の利用状況については、「利用経験あり」は全体で55.4%であり、会員では63.1%、非会員で51.6%、会員の方が高いものの、いずれも「オストメイト用トイレを知っている」割合に比較して、知っていても利用しない方がいることが分かりました。利用目的としては、「排泄物処理」が93.1%で最も多く、「装具交換」は14.4%で、会員、非会員に差はありませんでした。

 オストメイト用の設備があることを示すピクトグラム、またオストメイトを表すピクトグラム(オストメイトマーク)を知っているかについては、いずれも会員の82.8%、非会員の65.4%が「知っている」と回答しています。一方で「知らない」と回答した人はオストメイト用トイレと同様に一定数いることが分かります。ちなみにオストメイトではない人向けの調査結果では「オストメイトマーク」の意味を知っていると答えた人が14%に留まっていたという報告があるそうで、社会全体へのオストメイト認知度向上について取り組んでいくことが期待されます。

公衆浴場や旅館・ホテルにおける大浴場等の利用 生活上の問題や悩み事

 今回の調査では、約3割のオストメイトが公衆浴場や温泉施設を利用しており、一方で、「利用しない」と答えたオストメイトは約6割5分で、前回の調査と比較して、利用者が1割程度減っています。これはコロナ禍で外出を控えるオストメイトも多く、また術後経過年数が短い方の割合が多いことが影響していると推測されます。

 生活上で抱えている問題や悩み事については、「全くない」の回答が16.4%でした。一番多かったのは、「老齢化でストーマ管理ができなくなる(54.7%)」で半数以上の方が選択しています。以下、「災害時のストーマ装具の補給や自己管理(41.5%)」、「ストーマ周囲皮膚のただれや痒み(36.8%)」、「ストーマの便(尿)や臭いの漏れ(34.9%)」、「病気の再発・再燃・転移(33.7%)」、「ストーマのために普段の活動や外出に支障(28.4%)」、「金銭的負担が大きく経済的に不安(19.0%)」までが悩み事が「全くない(16.4%)」を上回るもので、オストメイトにとって誰でも経験する不安事項で占められています。また、精神的な悩みに関する項目を挙げる方も見受けられました。

新型コロナウイルスによる日常生活への影響

 新型コロナウイルスによって、日常生活の変化があったかについて「はい(変化あり)」と回答した方は42.2%で、以下の4項目に分けて自由記載で回答が寄せられています。「1)日常生活全般の変化」が90.8%で一番多く、次いで「2)精神的な変化」64.4%、「3)身体的な変化」56.7%、オストメイトとして気になる「4)ストーマケア上の変化」に記載があった割合は一番低く25.3%でした。各項目から特にオストメイトならではのコメントを抜粋した結果、コロナ禍、在宅生活を強いられる環境で次のことが共通して影響を受けたことと考えられます。

①ストーマ外来受診の変化:感染を気にして、自身で減らしているケース、病院側からキャンセルされているケースが存在していた。一方で不安から、受診を増やしたり、久しく行っていなかったストーマ外来へ足を運ぶ逆のケースも認められた。病院ではないが、同様に介護ヘルパーや看護師の訪問スケジュールの変化により、ストーマ装具交換や入浴が減るなどの変化の記載もあった。

②長期在宅生活により、体重、体型の変化、運動不足、食事の変化などで、排泄リズムや装具装着、ストーマ自体にトラブルが起き、その対応に苦慮したとの声があった。

③自身が感染した時に、ストーマを持つが故に、病院で対応してくれるのか、隔離生活のときのサポートの不安などを挙げる方が多くいた。

④コロナの影響で仕事が減る、または離職などにより収入が変化した方からの、装具やサポート製品購入など、オストメイトとして余計にかかる費用があることで経済的不安が挙げられていた。

災害への備え

 「非常持ち出し物品」の準備に関する問いに対して、「準備している」の回答が51.7%でしたが、約半数がまだ準備していない状況です。「非常持ち出し物品内にストーマ装具等が入っているか」の問いに対して、87.2%は「入っている」と回答していますが、「入っていない」の回答が12.8%もいることが分かりました。更に、ストーマ用品などを準備していると答えたオストメイトであっても、準備している日数は「1-7日」が4割となっており、被災生活が長期化し、7日を越えてストーマ用品などの物資が被災地に届かない事態が発生すると、非常に多くのオストメイトが衛生的にも非常に危険な状況になる可能性をはらんでいると言えそうです。

 ストーマ装具等の分散保管については、全体で「している」が31.6%、「していない」が64.6%で、「(JOA)非会員」に限ると「している」はわずか26.2%にとどまりました。分散保管場所としては、自宅が72.0%で自宅内にて場所や入れ物を変えて保管されており、次は公共施設と回答した人で9.2%でした。これはJOAが進めている「避難場所への個人装具保管推進活動」の成果だと考えられます。「その他」9.0%については、自由記載で確認すると「車の中」や「勤務先」などが多く見られました。

 災害発生時の避難場所を「決めている」人は49.0%で、「決めていない」人は46.1%と半数近くにのぼります。外出時におけるストーマ装具等の携帯について、「遠方外出時」が一番多く、「常に携帯」がその次で、双方合わせると75.8%で外出時への配慮がうかがえます。一方、遠方への外出に限らず「携帯していない」人は20.1との回答でした。

 次回の第三編が最後となる「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」のレポート。ストーマ装具等給付状況や使用しているストーマ装具等のタイプ、オストメイトへの理解度や困った経験などについてお伝えします。

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