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オストメイトの生活実態調査報告書(第三編)

 日本オストミー協会(以下、「JOA」と表記)が定期的に実施してきた、オストメイトの生活実態やニーズを把握し、その生活向上を図る活動の資料とするための生活実態調査報告書。今回がこの報告書についての最終レポートです。

目次

1ヶ月のストーマ装具等にかかる費用(給付額+自己負担額)

 1ヶ月当たりの費用額としては、「10-15千円未満」が29.3%と最も多く、次いで「5-10千円未満」の27.0%となっています。前回調査と比較して、「10-15千円未満」と「5-10千円未満」が占める割合が減り、それ以上の金額帯「15-20千円未満」+「20千円以上」が7%程増加しています。ストーマ属性別にみると、コロストミーでは「5-10千円未満」が最も多く、イレオストミー、ウロストミーについては、「10-15千円未満」が最も多いです。

 1ヶ月当たりの給付額を除いた自己負担額について、「0円(給付額だけで間に合っている)」が16.2%でした。一方で、「間に合っていない」が83.8%で前回データ65.3%よりも大きく増加しており、不足分を自己負担で補っている人の割合が18.5%も増えています。

 ストーマ種別で「間に合っていない」率が一番高いのは87.6%のイレオストミーで、この傾向は前回調査と同じです。ただ、コロストミー、ウロストミー、Wストーマについても「間に合っていない」率が、いずれも80%以上と前回より大幅に上がり、イレオストミーとあまり差がない結果でした。

 1ヶ月当たりの自己負担額としては、「2千円未満」が28.4%と最も多かったです。なお、ストーマ種別では、コロストミー、イレオストミー、ウロストミー共に「2千円未満」が最も多く、一方でWストーマは「2ー3千円未満」が最も多いです。また全体の平均不足額は3,920円と算定され、前回より500円以上増加しました。ストーマ種類別では、イレオストミーが4,796円と一番高く、次いでWストーマの4,627円、コロストミー、ウロストミーの順番です。ただ、それぞれの種別すべてで平均不足金額は増加しています。

 各自治体において検討されている給付額と実際に必要とされる金額との差が広がってきており、より実態に即した金額設定をすることが求められるでしょう。

 ↓ 「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」はこちらから

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使用しているストーマ装具の種類、面板のタイプ、交換頻度

 すべてのストーマ種別で、「単品系」が最も多いです。コロストミーが76.1%とその比率が一番多く、イレオストミーが70.1%で同じく7割を超え、ウロストミーは54.9%、Wストーマが57.5%で5割強でした。過去の調査データと比較すると、すべての種別で二品系から単品系への移行が確認でき、特にコロストミーとイレオストミーにおいてその傾向が強く認められます。

 面板のタイプについては、コロストミーで、「平面」が66.1%で最も多いです。その他の種別、イレオストミー、ウロストミー、Wストーマおよび消化器系では、すべて「平面」と「凸面」約半々の割合で同程度でした。

 ストーマ装具(面板)の交換頻度については、「1回/3日」が35.4%と最も多く、次いで「1回/4日」が23.6%でした。前回調査と比べても、同じような傾向が見てとれました。ストーマ種別では、ウロストミーのみ「1回/4日」が多いものの、コロストミー、イレオストミー、Wストーマ、消化器系ストーマでは「1回/3日」が最も多いです。

 浣腸実施については、「コロストミーとWストーマ」保有者2,423名を対象とした回答となっています。「浣腸している」は13.5%、「浣腸していない」は71.1%、「過去にしていた」5.6%で、現在実施していない方は76.7%となっています。浣腸実施者の術後経過年数別では、「術後20年以上」が21.8%と最も多く、前回調査と同じような傾向でした。年齢階層別では、40歳未満では浣腸実施者の割合は0%であり、40歳以上から、各年齢層で一定の割合(約10%-15%)で浣腸を実施しており、年齢層が高いほど、実施者の割合も多いようです。

 自由記載を見ると、災害時の避難所生活を考えて、浣腸に加えてストーマ装具も取り入れたというオストメイトもいて、災害時を考慮しての浣腸実施に関する変化は考えられます。その一方で、ストーマ孔からの排泄管理方法として、未だ一部のオストメイトでは愛用され、存続していることが今回の調査で確認できました。

一般社会および日本オストミー協会との関わり

 ストーマケアや装具の関連情報について、主な入手先としては「メーカー・販売店」が63.5%と最も多く、次いで「医療者」30.1%でした。3番目が「会報紙・広報誌」、以降は「カタログ・DM」、「インターネット」、「仲間」、「その他」の順でした。ストーマの種別、性別で見ても同じような傾向が認められます。一方で、会員・非会員別では、会員において「会報紙・情報誌」からの情報入手が37.4%であり、「メーカー・販売店」に次いで2番目でした。各項目を「会員:非会員」で比較してみると、「会報紙・情報誌 37.4%:15.3%」と「仲間 6.6%:1.7%」が会員で多く、「インターネット 13.6%:22.4%」、「医療者 24.1%:34.8%」で非会員の割合が多く、それぞれ特徴が明らかとなりました。

 オストメイトに関する社会の理解度について、「理解されている」が6.2%でした。一方で「あまり理解されていない」と「全く理解されていない」は合わせて89.3%でした。ストーマの種別、性別で見ても同じような傾向が認められます。

 「オストメイトのことが理解されていないため困った経験」に対する回答では「あった」が27.2%で、「なかった」が67.8%でした。特にイレオストミーにおいて、「あった」の割合が39.7%と高い結果となっています。これは前回調査と同様の結果です。イレオストミーの高値については、イレオストミーの回答者の年齢分布より、他のストーマ種別と比較して50~59歳が多く、平均年齢も10歳ほど若いことから、現役の就労世代が多く含まれ、その分、困ったことに遭遇する機会が多いと推察されます。

 困った経験があった方については、さらにどのような場面で困ったかを複数選択可で回答を得ています。結果、「外出先」が47.2%で最も高く、次いで「職場」17.0%、以下「その他」と「病院や施設」が13%台でほぼ同列で、最後が「家族関係」となっています。ストーマ種別においても、「外出先」が最も多く、次いで「職場」という傾向は全体と同じです。Wストーマのみ「病院や施設」が2番目なのは他と異なります。性別では、「外出先」が最も多いのは変わりませんが、2番目は女性で「病院や施設」、男性は「職場」となっています。

 その他(具体的に)に記載のあった213例を確認するとトイレ利用時の苦情等のトラブルや使いにくさなどトイレに関するものが74例、さらに公衆浴場等でのトラブルが23例、いずれもオストメイトに対する周囲の理解不足によるものが多いと推察されます。

 「自分がオストメイトであることが知られてもよい範囲」に対する回答では、「誰でも」が38.3%で最も多く、2番目、3番目は「家族だけ」が23.7%、次いで「友人知人」21.9%で、以降は「職場仲間」、「オストメイトの仲間だけ」でした。「自分だけ(=誰にも知られたくない)」の回答は1.8%と非常に少ないようです。

 オストメイトは排泄に関する障害を持ち、それは繊細な情報の1つと言えるでしょう。そのため、カミングアウトは多くの場合、課題となっています。今回の調査に対する回答で、約4割のオストメイトにとって、自身がオストメイトであることを告げた方が、それを告げないよりもメリットが大きいためと推測されますが、依然としてカミングアウトがしにくい状況は変わっていないと考えられます。オストメイトが安心して生活できる環境をつくっていくためにも、社会の理解度とあわせて、オープンにできるための環境整備が必要でしょう。

※ これまでの「報告書」に関するブログの内容を動画と音声で楽しみたい方はこちらからどうぞ

 第三編まで続いた「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」のレポート。いかがでしたでしょうか。私には、当事者の生の声の大切さや意義をあらためて感じる報告書でした。今後の当NPO法人の活動にも役立てていきたいと考えています。

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