主演は堺雅人と井川遥、主題歌は星野源、原作は山本周五郎賞
映画「平場の月」は2025年11月14日に公開された邦画で、原作は同名のタイトルで著者は朝倉かすみ氏。著者はこの作品で2019年に第32回山本周五郎賞を受賞し、第172回直木賞の候補にもなっています。監督は映画「花束みたいな恋をした」「いま、会いにゆきます」「ハナミズキ」などの土井裕泰氏。監督とプロデューサーから熱烈なオファーを受けた星野源が主題歌「いきどまり」を書き下ろし、映画公開と同時にリリースされています。
主演は堺雅人と井川遥で、中学生時代に同級生だった二人が35年振りに再会し、互いの距離を埋めながらやがて惹かれあっていくが、井川遥が演じる女性には「病」という現実が訪れる、という大人の恋愛と人生の映画となっています。

大腸がんを切除してストーマ(人工肛門)造設
井川遥が演じる女性は大腸がんが見つかり、外科手術を行い、ストーマ(人工肛門)を造設しオストメイトとなります。筆者の母も肛門に近い場所にある直腸がんを切除して、ストーマを造設する手術を約6時間かけて行い、オストメイトとしての日常生活に戸惑いながら、日々を送ってきました。大腸がんとの向き合いかたやオストメイトとしての日常はどこまで描かれるのだろう?という点にも強い関心を持って、この映画を鑑賞しました。
この映画の観賞後に知ったのですが、医療監修とストーマ監修としてこの映画に関わった方がいらっしゃいます。医療監修を担当したのが、がん研有明病院総合腫瘍科医師の小野麻紀子氏、ストーマ監修を担当したのはがん研有明病院看護部看護師の松浦信子氏。なるほど、ストーマ造設前の看護師の説明、抗がん剤の影響、ストーマからの臭いや音の心配、旅行など移動距離が長い場合のトイレの心配、様々なシーンで大腸がん患者やオストメイトの「リアル」がしっかり描かれていました。自宅のトイレ付近の鏡の前にあったのは、ウチの母も使っている消臭潤滑剤と同じではないか!と驚いたシーンもありました。
オストメイトのリアル
お二方の監修者が動画で語っているように、大腸がんやストーマと向き合っている方がこの作品を観ても違和感がないように、当事者ならではの様々な場面が描かれています。その点については別の出演者による対談でも、監督からきちんと描きたいと話があったと語っていました。実際に、腹部のストーマが映し出されるシーンもありましたが、とてもリアルでした。
筆者の母も、ストーマ造設手術後に初めて自らの腹部にあるストーマを見た時には「えー!」と驚いていました。もちろん、手術前に説明を受け、ストーマのイラストや画像も見て、位置も決めていましたが、未知なるモノを見たような反応でした。筆者も初めて目の当たりにすると驚きがありましたが、平静を保ち、これから全力でサポートしようと心に決めた瞬間となりました。
最初のうちはストーマ装具の交換に手間取ったり、就寝中に漏れてしまったり。周りのヒトは感じていなくても、本人はストーマからの臭いを気にしていました。腹部の膨らみに気付かれまい、という服装を選び、ガスの音がいつ出るか心配で、服の上からストーマ装具を軽く抑えることもよくありました。
間もなくストーマ造設から10年。母は82歳になりましたが、癌の転移や再発もなく、食事も比較的に自由に選び、明るく元気に暮らしています。オストメイトになって色々な悩みを抱えたり、生活上の困難と向き合う方も多いかと思いますが、映画やドラマ、小説などの登場人物でオストメイトが描かれるときっと励まされるのではないでしょうか。
魅力的なロケ地は朝霞市と志木市
原作者の朝倉かすみ氏も住んでいた時期があるという、埼玉県朝霞市で撮影が行われ、市内の10ヶ所以上がロケ地となっており、朝霞市は小説が発行された時から応援しているそうです。筆者も、荒川を挟んだ反対側のさいたま市南区に住んでおり、朝霞市には親近感があります。朝霞市立図書館には、原作の出版直後から、関連書籍などを集めた特設展示を実施しており、登場する場所のマップを独自で作成したそうです。朝霞市に隣接する志木市内も撮影場所となり、市庁舎1階には堺雅人ら出演者のサイン色紙を展示したり、映画のチラシの配布、撮影場所となった「いろは親水公園」のマップも作成したそうです。お近くにお住まいの方や、撮影場所に興味のある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
ストーマやオストメイトへの理解が深まりますように
音声動画で「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」の内容を知りたい方はこちらから







