今回ご紹介する書籍は難病患者として、またオストメイトとしての生活を描く「腸よ鼻よ」の6巻です。著者は潰瘍性大腸炎を原疾患としてオストメイトになった島袋全優さんです。闘病コミックエッセイですが、ギャグシーンが多いので暗くならずに読めると思います。
本書の書評
5巻で大腸全摘出の手術をしてストーマ造設をし、6巻では著者の退院してからの様子が描かれています。
いきなりプロレスの試合を見に行くのですが、試合終了後にはパウチがパンパンになって破裂寸前になりました。帰宅後、実に3年ぶりとなるカツ丼を食べますが、揚げ物が久しぶりすぎて途中でリタイアしてしまいます。また、ストーマ造設直後に、自宅のトイレでパウチ処理に手間取る場面が描写されます。定期診断でもストーマケアについての愚痴を担当医にこぼしたりと、オストメイトとしての生活に四苦八苦していました。その中で2巻の発売がされました。
ある程度経つと、著者はストーマ閉鎖の手術をします。そのせいか、6巻中はずっとお尻が痛いこと(肛門痛)に悩んでいました。また、ストーマ閉鎖手術の縫合不全により、難治性瘻孔(なんちせいろうこう)を発症して、入院もしてしまいますが、突如サイン会が決まり千葉へ行くことになります。
ですが、サイン会の帰りに連載作品の打ち切りを担当編集者から切り出されてしまうのです。落ち込みはしますが、連載終了まで描き切ろうとします。また、座っているだけでも辛い肛門痛という問題が発生します。それを「神経ブロック療法」という神経を麻痺させる注射によって、最終話を描き切るまでの1週間を乗り切りました。
晴れて(?)仕事から解放された著者。ドクターSは病状が悪化するのは漫画を描いているからだと言っていたので喜んでいると思いますが、内科医の山田氏は毎月アプリで読んでいたので、少し悲しそうでした。
そして連載終了後には炎症反応の高まりから、さまざまな治療法を試していきます。ですが、内臓の手術をしてしまうと他の病気を起こしてしまうことがある、というモノローグで6巻は終わります(どんな病気なんでしょうか?)。
6巻はストーマ造設による退院からストーマ閉鎖、そして安定しない炎症反応など、怒涛の展開でした。1〜6巻を見てきましたが、描かれているどの場面もオストメイトの参考になるのではないでしょうか。そしていまさら気づきましたが、本書は「次にくるマンガ大賞2019 WEBマンガ部門第3位」だそうです。
本書のもくじ
- 61指腸 解放された肉欲
- 62指腸 夏の思い出〜2014〜
- 63指腸 うら若い乙女、保健入れぬ乙女
- 64指腸 INZEI〜減らないで〜
- 65指腸 え?そんなもんなの?
- 66指腸 おばさん!そんなつもりじゃ!!
- 67指腸 ゴールの向こうには
- 68指腸 平成怪奇譚【オートレース場の幻影】
- 69指腸 保護者と私と
- 70指腸 麦のように
- 71指腸 友達ってことだよね…
- 72指腸 真白の紙 髪
- 73指腸 何か未来のヤツみたい
- 書き下ろし漫画01 カンチョーとセンチョー
- 書き下ろし漫画02 メリーからの報告
- 書き下ろし漫画03 単行本打ち合わせにて
書籍情報(本書記載内容より)
- 発売日:2022/03/10
- 著者: 島袋全優
- 発行所:KADOKAWA