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体質が変わっても少しの工夫で、30メートルの海も銭湯も大丈夫だった──平尾幸一×エムアクト 神戸翼【前半】

発覚したのは突如、尿がピンク色になったことでした。ダイビングを続けたい、その想いでセカンドオピニオンを取得。そのおかげでオストメイトでも深い海に潜れるとわかり、膀胱切除に踏み切りました。
その後、経過観察でもストーマを診てもらいたいという気持ちはもっています。なぜなら不安があるからです。

がんで膀胱を切除しウロストミーになった平尾幸一さん。オストメイトでは珍しく、スキューバダイビングとヨットを趣味としているそうです。発症の経緯から水やお風呂の付き合い方について伺いました。

目次

オストメイトになった経緯

ゲストの紹介

本日のゲストは平尾幸一さんです。簡単に自己紹介をお願いできますか?

膀胱がんが原疾患でウロストミーになり、オストメイト歴は14年です。現在は愛知県豊橋市に住んでいます。よろしくお願いします。

発覚

早速ですが、オストメイトになった経緯をお話ししていただけますか?

はい。兆候があったのは43歳のときです。会社の後輩と飲んでいたときに、ピンク色の小便が出たんです。これはおかしいと思い、翌日泌尿器科を受診したところ、膀胱にある腫瘍が割けて出血したとのことでした。年末には膀胱壁にある腫瘍──この段階ではがんだと告知は当時なく──を切除しました。それを3回繰り返しました。

59歳になり、4回目の手術をするときには「膀胱を切除しなきゃダメだ」と言われました。当時楽しんでいたスキューバダイビングができなくなると思いました。なので、高校の同級生に築地のがんセンターを紹介してもらい、セカンドオピニオンを取得しました。その際「筋肉層まで侵入しているから、手遅れになる前に膀胱を切除した方がいい」と診断されました。
ダイビングができなくなるなら手術をしたくないと伝えると「(ダイビングを)続けられるよ」と回答がありましたので、膀胱切除に応じた次第です。ちなみに執刀医はダイビングをやっておられたようですね。

運動に詳しい医師だったんですね。

今でこそセカンドオピニオンは一般化されていますが、なかなか大変だったのではないかと想像しています。当時は「自分の患者を他の人に診てもらうのはけしからん」と言い出す医師も結構いたと思いますので。

入院

続けて手術と入院中のお話をお聞きしてもいいですか?

はい。手術自体は無事に終わったんですが、問題が2つ発生しました。
ひとつは手術痕が膿んできたことで、もうひとつは手術痕がV字型の谷になっていたことです。

まず術後に手術痕が膿んできたため、感染予防のために縫合した糸を抜いて蒸留水で患部を洗っていました。
また、食事を十分に取れれば傷口も塞がっていくので再縫合できるのですが、術後すぐは3分がゆ程度でも腸閉塞を引き起こしてしまったんです。なので中々縫合ができませんでした。
しばらくして通常の食事が食べられるようになると、傷口の肉が盛り上がり縫合できるようになったため、手術が終わった1か月後に傷口を再閉鎖できました。

もうひとつの問題は、手術痕がV字型の谷になってしまったことです。そのせいでバックの縁が当たるんです。なので、当たる箇所の接着部分を切って貼っています。

安心できるようになるまで時間がかかったんですね。手術痕のV字型は、いまもそのようになっているんですか?

そうですね。ちょうど谷の一番底に縁が当たるような感じです。面板を1センチくらい切って、手術痕に当たらないように調整しながらパウチ交換をしています。

当たっているとそこが痛かったり、かゆかったり、気持ち悪いというのが出てくるということですよね。少し切ったりするパウチの工夫はWOCナースさんにアドバイスをいただいたんですか?もしくはご自身独自のものでしょうか?

自分で考えてやっています。はじめはみんな貼り付けていたんですよ。切って当たらないようにしたのはここ5年ほどのことです。

退院後のストーマ外来

ありがとうございます。続けてお話をお聞きしたいと思います。
退院後は定期的にストーマ外来に通われると思うんですが、その辺りのお話をお聞きしてもよろしいですか?

はい。術後すぐは、医師に問診を受け検査結果の経過報告を受けた後、WOCナースさんがいるストーマ外来に行っていました。はじめの5年間は3か月ごとに1度の頻度で受診していましたが、その後5年間は半年に1回のペースに変わりました。

実はショックだったんですが、11年目になると(4人目の)担当医師に「もう来なくてもいいよ」と言われたんです。
さまざまなところを検査してくれるので健康診断のつもりで──私の身体が毎回大丈夫なのかと確認の意味で──受診してたんですよ。また、非常にさみしかったんです。
現在、皮膚があれたりして調子が悪いときは皮膚科に行っています。

担当医師から通う必要がないと言われたあと、WOCナースさんがいるストーマ外来は継続して受診しているのでしょうか?

ストーマ外来も医師の検診を受けてから行きますので、そこで終わってしまいました。看護師さんとは個人的に学会であったりなど接触はありますが、病院でお会いすることはなくなりました。

そうなんですね。
担当の医師からすると、症状が落ち着いているので定期的に診る必要はないという判断だと思いますが、WOCナースからすると、定期的に診たいというイメージはしていますが、難しいところなのかもしれません。

一方で平尾さんの原疾患が膀胱がんなので、1年に1回はがんの定期的なフォローを含めてなにかしておいた方がいいと思いましたが、そちらは大丈夫だったということですね。

きっとそうですね。健康診断は勤務先の健康診断やがん検診も含めて継続はしていましたけどね。

医療者へのメッセージはありますか?

ありがとうございます。
オストメイトになった経緯で最後の質問です。医療者へのメッセージはありますか?

そうですね…。
担当医師の方に、もう少し言葉や想いで患者に寄り添う姿勢が欲しいと思いました。私たちは日常生活の心配から質問するので、内心はとても不安なんです。

術後、V字型になっている手術痕を──10年の中で4人の先生に変わったんですが──誰も見ていないんです。「切ったら治ったんだよ」と、そこまでが医者の仕事でその後転移してないかチェックする、こういう世界のように受け止めております。「診んかい―っ」と見せるわけにはいきませんので。
なので言葉の上でもう少し寄り添ってほしいのですが、受診しても「大丈夫、大丈夫!」で終わっちゃうわけなんです。現実的にはWOCナースさんの世界になるのかもしれませんが。

そうですね、お話を聞いていると医療の世界も分業化と言いますか、住み分けされています。
ストーマのケアや手術痕のところでは、WOCナースさんは当然それが役目のでみていただけますが、医師にも患者さんに寄り添った姿勢や質問をしていただけると安心するということですね。

日常生活について

食事

では、生活のテーマに移りたいと思います。
まず食事についていかがでしょうか?

食事制限はないんですが、体調によって食べられるものが変わります。
寝不足や疲労があるときは、柿やこんぶなどお腹が冷える食事はできません。それでが原因で腸閉塞を引き起こしで4回入院しているんです。
腸閉塞になりやすい体質みたいなので、日常では規則正しい生活を送っています。

体調が悪いときに食物繊維が多かったり、いつもと違うものを食べたりすると腸閉塞などの症状が起こる確率が高くなるということですね。

オストメイトになってもスキューバダイビングをする

続けて運動のお話しをお聞きしたいと思います。

はい。ひとつはスキューバダイビングで、もうひとつはヨットです。

ダイビングに関しては、手術をした半年後に伊豆の熱川でテストダイビングをしました。翌月は沖縄の前田美咲で32メートル潜りましたね。
潜るときはパウチの中身を空っぽにします。32メートルだと40分ほどで中身が満タンになります。32メートルを潜ると4気圧ほどかかり身体がそれに耐えてますから、その影響でパウチに押し出されているのだと実感しました。

術後はスキューバダイビングを100本以上潜っています、これは非常に楽しかったです。冒頭の写真は、北マリアナ諸島の洞窟から見える「ロタホール」と呼ばれるものです。そして房総半島の東海岸で国立環境研究所のサンゴ礁の調査サポート──これが186本目のダイビングだったんですが──を機に卒業しました。

術後6か月で1本目のスキューバダイビングをされたそうですが、パウチはどのように取り扱いしたんですか?お風呂に入るときに使うパウチシートのような、特別な対策をされたんですか?

対策は、お腹のところに穴が開いている腹ベルト付けて潜っていました。周りをテーピングする以外には特におこなっていません。
ただ、1日3回潜るということは濡れた状態でいるということなので、パウチの縁がふやけて剝がれやすくなっています。なので、3日で交換するパウチは2日で交換したり、2日のものは1日で交換したりしてトラブルが起きないように注意をしていました。

ありがとうございます。
あと32メートルというところですね。10メートルほどのファンダイビングで潜ることは多くの人がしていると思うんですが、32メートルというのはライセンスの取得やそれなりの経験がないと難しいと想像しています。
ちなみにパウチに尿がすごいたまったとのことですが、浅いダイビングでもたまり具合は同じなのでしょうか?

同じですね。私は5メートルより深いところは耳の圧など調整して──小さいときに川に潜ると耳がツーンとするのと同じイメージで──息抜きしながら潜るんです。また、5メートルほどで5分停止してドライスーツ内の空気を抜きますので──エアを抜くと言います──そういうところで出てるんじゃないかという気がしますね。
20メートル潜ったところででパウチを触ってみると尿が「出てる、出てるな」と感じたりします。

ちなみに潜る深さで滞在時間は違います。32メートルでは40分ですが、10メートルぐらいでしたら1時間は潜っています。

そうなんですね。ちなみにダイビングはバディを組む──だれかと一緒に潜る──ことが一般的だと思いますが、その方にはオストメイトであると共有してから潜るんですか?

お世話になったダイビングショップの方はご存じですけど、バディやガイドさんにオストメイトであると言ったことはないです。上がってきたときに「実はこんなもの付いているんだよ」という話をするときはありますが、オストメイトだから配慮してくれと言ったことはないですね。

平尾さんほどオストメイトになってダイビングをしている方はいないと思いますので、大変参考になりました。

では、もうひとつの趣味であるヨットについてお話しいただけますか?

ヨットを買って日本一周

はい。現役を早期退職して愛知県に戻ったときにヨットがほしいと思い、──大学のころヨットをやってましたので──33.5フィートのヨットを中古艇で買いました。そのヨットで4年がかりで日本一周をしました(半分はひとりで周っていました)。

ここで思い出深いのは銭湯です。漁港に入れば銭湯しかありませんので、お店の人に聞いて近くにスーパー銭湯や温泉ありませんかね、と聞くんです。
そういうところのパウチ交換は、主にスーパーの障害者用トイレで20分くらいかけて交換をしていました。

ありがとうございます。日本一周をしたとき、一番長い時でどのくらいの期間移動したりするんですか?

基本的には朝5時から出て翌日の3時までに港に入るというスケジュールです。
ところが遠い──沖縄の那覇や伊野湾から石垣島までなど──100キロ超えて進むところは一晩ではたどり着かないので、オーバーナイト(夜をまたいでの航海)で走るんです。また沿岸の免許を取れませんから、ライフボードを別にいただいて衛星電話も借りて行くんですね。

オーバーナイトしたのは伊野湾から博多までです。実はこのときタモリカップに出ようとしていたんですが、開催場所に間に合わない計算になってしまいました。なので、プロに頼んで、ヘルプを付けて2日で博多湾まで行きました。

ありがとうございます。
ということは、基本的に船の上でのパウチ交換は想定していなくて、漁港に入ってスーパー等で行っていたということですね。

お風呂

続けて銭湯のことを聞いてもいいですか?

はい。公衆浴場と銭湯に入るときは、入浴前にパウチの中身を排泄していました。

風呂場に入るときは、パウチ部分をタオルで隠して入ります。お風呂に入るとパウチが浮き上がってきますから周りの人が気にしないように沈めて入っていました。なので、あまりたくさんの人がいると入りづらいんですが、他の人から気にされることはなかったですね。
身体を洗うときは、ウロストミーでパウチが右側についているので、浴場の右側の端近くを使っていました。そんなところが注意していた点です。

ありがとうございます。ヨットの流れもあるんですが、日本一周をするときに漁港を周っていくので、オストメイトになってから銭湯や公衆浴場に行く機会がたくさんあったと思います。そのときにトラブルなどありませんでしたか?

一度もないですね(笑)。

なんと(笑)。

1年で港に60回ほど入るんですよ。秋になったらヨットを冬に預けれるところに預けて、翌年そこからスタートします。1年と言っても活動するのは3カ月くらいですが、その半分以上は銭湯に入っています。それでも何か言われたことは1度もないです。番台さんの近くで脱衣をしても何も言われませんでした。

日本一周をしているので、ある意味全国の銭湯を周っておられると思います。
地域に関係なく多くの銭湯に行かれているのに特に何もないというのは驚きました。勇気を出して行ってみれば案外行けてしまうということかもしれませんね。平尾さんのマナーも良いということもそうですが。

やはり他に入っている方は(パウチを)目にすると「これは何だろう?」と思ってしまうので、パウチを極力見えないようにしていくこと、漏れない対策をすることが大事なんでしょうね。

前半はここまでです。
後半は、お仕事やオストメイトになって得られたもの、今後やりたいことや夢など、平尾さんの具体的なお話をお届けします。

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この記事を書いた人

ライター//元広告の営業職/NPOの発足から携わって8年目。みなさまの意見が日々の糧になります。

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