IT時代で、オストメイトの生活はどのように変わるのでしょうか。
前半では、オストメイトの課題解決をするアプリ「オストメイトなび」の開発経緯をお話ししました。続く後半では、インターネットの登場によって変わる生活や患者団体、メディアでの情報取得などについて考えていきます。
■インタビューの前半はこちら
オストメイトを取り巻く環境と課題感
人口推移とスマホ普及率
オストメイトを取り巻く環境と課題感というテーマは、今回私がお話しする中で1番重要なところです。
たとえば、人口のうちの何%がオストメイトというのもしっかりデータが出ています。それを使うと、オストメイトの数の将来推計を作ることができます。もちろん完全に一致するわけではないですが、2060年には約20万人いると予想されます。
他にもどのような地域にオストメイトの方が多いのかも話題になったりします。当然ながら人口が多いところに、たとえば東京都などの都市部にオストメイト人口が多いですね。
オストメイト向けの支援やサービスを考える場合には、年齢別の人口推移を見ておくことは重要だと考えています。年齢別に見てみますと、2045年には高齢者が75%と。もともとオストメイトは高齢者が多いのですが、さらに高齢者が増えるため、生産年齢人口の割合は24%ほどになると推計に出てきます。
ここで注目して欲しいのは、いわゆるスマホ世代と呼ばれるITや情報処理に強い世代にだいぶ変わってきていることです。ここが大きなポイントになるんじゃないかと思います。
2015年にスマホ世代は、22%しかいません。オストメイト向けのアプリをつくっても、そんなに利用率がないかもしれません。ですが、20年後の2045年になると、スマホ世代が多くを占めます。100%にはならないと思いますが、スマホを使いインターネットから情報収集ができる人が99%という世代になります。
そうなると、情報提供の仕方や状況も変わります。それらを見据えながらなにをつくっていくか、考えるべき点だと思っています。
国内の約20万人を超えるオストメイトに向けて、我々にはどんなことができるのかと考えながらNPOとして活動しています。
IT社会の到来でなにが変わるか
環境に対する課題感としては、3つあると思います。
ひとつは、情報化社会に突入したことです。
昔は対面でしか情報が得られなかった時代から、いまはインターネットで情報が取れる時代です。その意味では、これまでの情報提供体制では不十分になってきています。
もうひとつは、人と人のつながりです。
もちろん、そのつながりは継続していくのも重要だと思います。昔は対面でオストメイト向けの相談会を行い、そのなかでだけ情報がもらえると言う仕組みだったのが、今後はコロナの状況からもそうですが、インターネットを使いオンラインで情報を得たり、相談会へ行ったりなどが日常になってくるかもしれません。なので、人と人とのつながりも新たな形になっていくだろうと思っています。
さいごは患者団体の役割です。
昔の完全に対面でしか情報が得られなかった時代は、患者団体は非常に重要でした。そこで情報を得て、自分の生活に活かしていくというのがあったわけですが、いまはかなりの情報がインターネットで取得できるような状態です。
そのような状況で患者団体がどのような形でそこに関わっていくかが、ひとつのポイントになっていると思っています。人によっては患者団体がなくなっていくんじゃないかという話もありますが、それはおそらくないのかなと思っています。
人と人とのつながりを重要視するのは続いていくと思いますので、患者団体として役割が変化することが考えられます。そのような課題感があるということです。
実際にオストメイトに悩みを聞いてみると、生活にまつわる悩みや人や社会との関わり、装具にまつわること、そもそも障害を受け入れられない、受容しにくい、仕事が見つからない、学生生活、結婚の悩みなどがあります。外見は健常者と変わらないことが多いので、配慮されないという悩みも聞きます。
それに対してどういった解決策を考えるかというと、既にいままでいくつもの提案がされ、実行されています。
ひとつは医療者によるケアで、病院や診療所などで行われています。
ほかにピアサポートという、当事者同士のつながりの中から生まれるサポートもあります。たとえばオストミー協会などの患者や障害者同士のつながりなどがあります。
さいごが環境ですね。すべての人がこれをやるのはなかなか難しいところありますが、周りの環境を整えることも重要です。たとえばトイレを増やしていく活動であったり、障害者給付の制度などの仕組みを考えることです。また、社会全体のオストメイトの理解を増やしていくのも重要になります。こういうのは環境的なことですけど、これに働きかけるのも重要になってきます。
テーマはおおきくわけて2つある
いまの話はこの表にまとめられます。これはなんの表かというと、左側は課題で、真ん中にソリューションつまり解決策、右側はこれを行っている団体をまとめたものです。
表の左側にある疾患管理とセルフケアの項目での課題は、原疾患の悪化や排泄コントロールのトラブル、ストーマ装具交換、皮膚トラブル、お風呂などの問題です。
これに対して社会はどのようなソリューションを提供しているかというと、ストーマ外来などの医療機関は原疾患の悪化や不安を医療で、ストーマ装具メーカーや販売店は排泄コントロールをストーマ装具などの開発や販売という形で解決策を提供しています。
障害者団体(ピアサポート)は非常に多くのところを網羅する形になります。ストーマ造設後の生活や病気、障害を受容できないなどの相談に応じますし、人や社会との関わりでは、カミングアウトしづらい、安心して旅行できないなどを障害者団体がサポートしています。
自治体は人や社会との関わりの課題に対するソリューションとして、オストメイト対応トイレを設置したり、障害者のスペースや施設を作ったりします。「お金が掛かる」という課題に対しては、障害者手帳や障害者年金の仕組みを国や自治体が提供しています。
そういう風に見ていくと、オストメイトを取り巻く課題に対して解決する取り組みが行われていて、それらを行う団体がいくつもあるのです。
ここで皆さんにひとつ覚えていただきたいことは、自治体の活動は自ら行われることもあるんですが、自治体や国に働きかけることで(ソリューションが)進んでいくことがあります。
たとえば、オストメイト対応トイレの数や障害者手帳の給付の額・項目など、オストミー協会などが働きかけをした結果、環境が整えられるといったケースもあります。
こういった活動がないと、なかなか自治体も動きにくいということがあったりします。国自身もそこで困っている人の声を集められたうえで、実際に政策に落とし込んでいきますので、団体としての活動がとても重要なんです。
オストメイトなびプロジェクト
「オストメイトなび」の役割とは
そんなことで、我々NPO法人エムアクトは、外出時の排泄物の処理やオストメイト対応トイレというところに着目して、オストメイトなびというアプリを作ってきました。
オストメイトなびのアプリは「オストメイト対応トイレを探す」「ストーマ外来を探す」「ストーマ装具取り扱い店舗を探す」「電子版の患者情報カード」「新しいトイレ情報を投稿する」の機能があります。それに加えて「相談会・セミナー情報の配信」もありますので、もし皆さんが参加されている相談会やオストミー協会の活動などで、オストメイトなびで情報を配信したいかたはご連絡いただければと思います。
また、オストメイトなびは、日本語だけではなくて他国の言語が使えるようなっており、英語やフランス語、スペイン語、ロシア語、韓国語、中国語に対応しています。
これはオストメイトなびの機能ごとに提供主体を示してるんですが、さまざまな団体さんの協力を得ています。
トイレの検索は、ボランティアさんに協力をいただいていますし、ストーマ外来の検索では、病院や医療者などに協力していただいています。
ストーマ装具取り扱い店舗の検索は、ストーマ装具を取り扱っている店舗さんの協力ですね。
イベントは、イベントを主催している方々に協力をいただいています。このように多くの団体さんの協力をいただきながら、機能が充実していっています。
新たな機能を追加!
そして現在、新しい機能を加えました。表の下の部分のお金掛かるという部分です。どんな機能かというと、マップ上で自分たちが住んでいる自治体の給付の情報が見れるようにしています。
実は、各自治体によって給付の対応が違ったりします。たとえば、上限額が10,000円だったり、12,000円だったりなど隣の自治体ではその製品の額が違ったりするんですね。加えて、対象となる製品(品目)が変わったりもします。この自治体ではこの製品が入っているが、隣の自治体では製品が入ってないということもあります。
それも含めて見える化して、アプリ上で探すことができる機能を追加しました。これはあるメーカーさんと協力してこの機能を開発しているので、気になるかたは、ぜひ見ていただければなと思います。
YouTubeチャンネル「オスとぴ」の立ち上げ
双方向の活性化を目指して
そしてアプリではフォローしきれないさまざまな課題に対して、YouTubeチャンネル「オスとぴ」を立ち上げました。
アプリは当事者の実生活をサポートする側面が強かったですが、YouTubeではケアや当事者の事例など一歩踏み込んだコンテンツを扱っています。また、双方向のコミュニケーションやコミュニティの活性化を狙い動画というメディアにチャレンジしました。
内容は、おすすめの料理と生活関連情報、当事者のインタビュー、関連製品の情報に関するものです。
1日あたり、大体100人ぐらいの方々が視聴しています。女性が比較的多くて、また40代以降のかたが多いです。1ヶ月に2000人ほどが視聴しています。
オスとぴを今後どのようにしていきたいか
オスとぴをどのようにしていきたいかという話をします。
いろいろなところにオストメイトの抱える課題がありまして、さまざまな解決策が提供されています。なので、今後はオスとぴを使って解決策などの情報発信をしていきたいと思っています。
たとえば、お風呂に関する情報や病気・障害を受容できない職場や学校生活、恋愛や結婚などの、もっと知りたいということを取り上げて、実際に動画として配信していきたいと思っています。
そして理想形としては、昔メレンゲの気持ちというテレビ番組がありましたが、そのオストメイト版のようなものを週末とかに配信して、オストメイトと医療者とメーカーさんとお茶を飲みながらお話をする形で、こんなことがあるんだよとか課題とか、どうしたらいいかを話す場をYouTubeの中でお届けできないかなと思い、いま企画をしております。
そんな場をつくっていきたいなと思っております。
※本記事はYouTubeチャンネルの動画を元に、執筆者が加筆・修正・編集を行なっています。
公開インタビュー撮影会は月に1回を予定しております。お話しても良いという方はご連絡いただけると幸いです(自薦・他薦大歓迎です)。
メールアドレス:info@m-akt-jp