今回ご紹介する書籍は、難病とオストメイトの生活を描く「腸よ鼻よ」です。著者は潰瘍性大腸炎を原疾患に持つオストメイトの島袋全優さんです。闘病コミックエッセイですが、ギャグシーンが多いので暗くならずに読めると思います。
本書の書評
病気の発見は遅れることが往々にしてあります。そして病状が進行すると、手術や医療器具が必要になります。
時として病気の診断は難しくなることがあります。いくつか理由はありますが、ひとつは病状と診察する医師の専門分野が異なるため、該当する病状を判断できないことです。
たとえば、眼科医は目の症状については詳しいですが、心臓外科の手術をすることはできません。心臓に対する専門的な知識と手術をする技術がないからです。該当する部位と診てもらう科が一致しなければ、症状にあった診断や処置ができないこともあるでしょう。
その問題が顕在化したのが、セカンドピニオンという概念だと思います。
著者である島袋全優さんは、潰瘍性大腸炎を原疾患に持つオストメイトです。本書は闘病のギャグエッセイ漫画ですが、医療行為の描写は当時の体験をほぼ再現しているそうです。実体験に基づく難病の治療ドキュメンタリーとも言えるでしょう。
1巻では、1万人にひとりの難病である潰瘍性大腸炎の発覚から治療までの流れが描かれています。
本書の見所は、ストーリーが患者側と医療者側の対話形式で進むところです。医師の説明と、治療の中で感じる著者の疑問と感情の動きは共感を覚える方も多いでしょう。そして病院の中で看護師との関わり方にも注目して欲しいです。
当事者(または患者)に近しい人は、医療について考える一助にしてもらいたいと思います。
また著者は、家族に病気のことを理解してもらうのが難しいと感じたこともあったようです。家族や友人の大きな病気を理解するためにも、近しい人にもおすすめです。
本書のもくじ
- 1指腸 腹痛は春風と共に
- 2指腸 乙女と腸はか弱くて
- 3指腸 出会いと腸のから騒ぎ
- 4指腸 眠れぬ夜は君のせい
- 5指腸 はじめてをあなたに
- 6指腸 あなたはいずこへ
- 7指腸 スキ・キライ…
- 8指腸 旅立ちと書いてリハビリと読んで
- 9指腸 友よ永遠に…
- 10指腸 さよならの向こう側
- 11指腸 編集者、襲来
- 書き下ろし漫画 全優のばーちゃん
書籍情報(本書記載内容より)
- 発売日:2019/9/3
- 著者: 島袋全優
- 発行所:KADOKAWA