以前にご紹介した「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」でも、オストメイトの約半数がストーマ外来の受診をしているのは術後5年までで、その後は受診しているオストメイトが減っていくことが分かりました。ストーマ外来の受診が「受診必要なし」と判断しているオストメイトもいれば、「受診できていない」と回答しているオストメイトもいました。「ストーマ外来」とはどういうところで、どのようなことができるのか、あらためて調べてみました。
「ストーマ外来」とは?
ストーマ造設手術後のオストメイトの快適な生活をサポートするために、さまざまな病院でストーマ外来が開設されています。ストーマ外来では、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)や、ストーマケアに関して豊富な知識や技術をもっている看護師が、オストメイトやその家族の相談に応じてくれます。ストーマ外来では、医師や他種職とも連携して専門的な知識に基づくストーマケア方法などさまざまな情報を教えてくれ、症状の改善や日常生活上で困ったことに対して適切な助言をもらうことができます。
下記に表示した「ストーマ外来検索」では、「他院でストーマを造設された方への受入」が可能かどうかや「紹介状」が必要かどうかの検索項目もあります。
こちらのアプリでもストーマ外来の検索ができ、認定看護師の有無や他院患者の受け入れについての記載もあります。
ストーマ外来では次のようなことが相談できます。
退院後の定期検診やセルフケアの方法(自然排便法、潅注排便法、装具交換方法、スキンケア方法、ドレーン管理など)、装具やストーマケア用品についての情報提供と選択の基準、ストーマの合併症予防、ストーマ周囲のスキントラブルへの対処法、排尿や性機能障害の相談(必要に応じて関連科への紹介)、社会保障制度に関する手続きの仕方、患者会の紹介
コロナ禍におけるストーマケア等への影響
コロナ禍という特殊な状況はオストメイトの生活にも様々な影響を及ぼしました。「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」に寄せられた、コロナ禍におけるストーマケア等に関するオストメイトの声を見てみましょう。
自粛生活で体重が増えたため、下腹に贅肉がつきパウチがうまくはれず補助テープを貼ってもすぐ剥がれるようになりました
体重増加の影響でストーマサイズが変化し、装具の変更を繰り返してしまい、皮膚トラブルやストーマを傷つけたりすることを繰り返しています
必要な定期検査・ストーマ外来受診がしにくいです(病院の感染状況、交通機関の混乱等)
ストーマ外来受診の減少、かかりつけ病院でクラスターが発生し、外来受診が出来ず、症状の軽いケアは延期となりました
ストーマ周辺皮膚のただれがひどくなっても、コロナ不安で受診を控えています
半年前からストーマの交換を2日毎から3日毎に変えました
デイサービスでストーマ交換をしていますが、コロナで休みになって困りました
在宅時間が増えてストーマ管理が楽になりました
日中にパウチ交換が必要になっても、ゆっくりすぐに対応できました
日本オストミー協会「第9回オストメイト生活実態基本調査」より
ストーマ造設の術後経過年数がどうであれ、ストーマの形状や周辺の皮膚の状態、オストメイトとしての生活や心身の変化などは本当に人それぞれなのだということがよく分かりました。日本オストミー協会としては術後経過年数が長くとも、適宜、ストーマ外来の受診を推奨しているそうです。
↓ 「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」はこちらから
音声動画で「第9回オストメイト生活実態基本調査報告書」の内容を知りたい方はこちらから
「ストーマ外来」の可能性
ストーマ造設を必要とする患者が順調に身体・心理・社会的な適応ができ、またQOL(生活の質)を高めていくためには、術前・術後・社会復帰後のそれぞれの時期に応じた、専門的で個別的なケアが必要だといわれています。ストーマ造設術後の患者が、ストーマの形状や排泄方法の変化を受け入れていくことや、ストーマケアの習得が不十分なまま退院しなくてはならない場合もあり、さらに家族も含めた長期的なかかわりや、高齢化における地域連携の必要性など多くの課題を解決していくためにも、ストーマ外来の役割は非常に重要だと考えられます。
ストーマ造設時の医療機関が、現在のお住いの近くではない方もいらっしゃるかと思います。今回の記事の最初にご紹介したストーマ外来検索で、現在の生活の中で通いやすい場所にあるストーマ外来がないか、調べてみてはいかがでしょうか。医療機関側に対応する時間の余裕がないなどの事情もあるかもしれませんが、オストメイトにとってストーマ外来がもっと身近な存在になると良いと感じます。